Cohana and Ninigi Vol.8 アイトル サライバ さん in スペイン

新シリーズ Cohana and Ninigi

ハンドメイドに恋して、ハンドメイドと生きてる! そんな「人」を特集するシリーズです。手芸でにぎやかに実り豊かに活躍されている「人」を中心に、Cohanaとのご縁を交えて、さまざまな視点でハンドメイドの世界を紹介していきます。

Cohana and Ninigi Vol.8

アイトル サライバ さん in スペイン

スペイン在住のアーティスト。スペインのクエンカ大学で美術を学び、卒業後、数冊の画集や詩集を出版し、様々な賞を受賞。芸術の幅広い分野で評価されています。

アイトルさんの芸術表現のフォーマットには垣根がありません。ドローイング、陶芸、テキスタイル、絵画、ビデオ、写真などその時のテーマと表現にフィットするものを選ぶ自由なスタイルです。

さまざまな分野からのオファーで多くのコラボレーションを精力的に実現し、魅力的なプロダクトを生み出しています。また、彼のアート作品は世界中の美術館やギャラリーで展示されています。

アイトルさんの作品には、豊かな情感と大いなる自由があります。芸術家として、またひとりの人間としての彼の哲学は、多くの人々に届き、支持されています。

近年ではテキスタイル・アーティストとして、また毛糸メーカーとしての活動がますます盛況で、今後の活躍から目が離せません。

 

Vol.7 前編、Vol.8 後編の2回に分けてお届けしています。後編のVol.8では アイトルさんの日本についての想いや作品やアトリエを紹介していただきます。

 

アイトルさんの前編のVol.7を見逃した方はこちらでご覧いただけます。

2024年の日本旅行はいかがでしたか?

日本はたくさんの学びがある国です。その学びはいつも私の想像を超えるものです。

私が開催するワークショップに加えて、日本の職人さんのもとで自分が刺し子や草木染めの勉強することも大きな目的です。

普段は木々の静けさの中を歩いて観察して学びを得ていますが、都会の喧騒の中を歩いて観察しても同じように学ぶことがあります。両方とても楽しいものです。

都会の持つスピード感も神社仏閣の持つ穏やかな静けさもどちらも等しく美しい。

日本は私の魂をいつも癒してくれます。

さまざまな国で活動されていますが、日本の手仕事のどんな部分に魅力を感じられますか?

日本の職人の手仕事は、手仕事という分野で仕事をする者すべてにおいて完璧なお手本だと思っています。

日本の工芸、デザイン、細やかな仕事、その価値とそこに注がれる敬意は特別なものです。日本へ行く度に、インスピレーションが刺激され、出会う人や物すべてから学ぶことがあります。

特にテキスタイルは、私がすごく気に入っている日本の工芸の分野のひとつです。藍染、刺し子、ボロ、刺繍。。。決して色あせることのないインスピレーションをくれる世界です。

 

最近の作品やお気に入りの作品を紹介してください。

これは日本の刺し子とボロからインスピレーションを受けてできた作品です。刺し子やボロは、私が幼い頃いつも目にしていた、祖父母や母のリペアやダーニングにとても良く似ているなと感じました。

この作品は刺し子とボロのベースに、ヨーロッパのキリスト教以前のペイガニズム(キリスト教以外の多神教)の要素の刺繍を施しました。それは、ヨーロッパにキリスト教が到来する以前に存在した信仰で、私の作品に多大なる影響を及ぼしています。この作品は、まったく違う場所から来たものの文化的に精神的な統合を意味しています。

結局、私たちは自分たちが思う以上になにか普遍的なもので繋がっているのです。

 

この人形はウォルナッツの殻で染めた布きれを使って作られています。長い間大切にしてきた私にとって思い出深い布切れを加えて仕上げました。大切な、自分にとって意味のある布切れに命を再び吹き込む、最も威厳のある美しい方法だと感じました。

 

このお守りは私の国スペインのスカプラリオというお守りにインスパイアを受けて作りました。スカプラリオ自体はもう使われなくなってしまった、失われた伝統です。

私の羊から作った毛糸を使ってお気に入りの道具「ポケおり」で作りました。

あなたのアトリエ/仕事場を見せてください

私のアトリエ、まるで時間が止まった場所のように仕上げています。ここにあるのはナチュラルで手作りされた、ヴィンテージの素材です。すべてが完璧な調和をなして、私自身が仕事をしやすい環境に作り出しています。

スペインには昔から素晴らしいテキスタイルの伝統があり、50年代や60年代の上質な古い裁縫材料を今でもわりと簡単に手に入れることができます。

私の作品に使う素材の多くは、50年以上前にスペインで作られたボタンや糸です。古い店で忘れ去られた美しい古い箱の中から、そして、市場で宝物探しのように、素材を見つけては集めています。

あなたのクリエイティブにおけるインスピレーションを教えてください

私のインスピレーションの源は2つあります。私の個人的な日常生活の実録、それから私のスピリチュアルな信念です。私にとってアートは常に神という存在に近づくための手段です。見えない世界とつながる、そのなかで自分自身が何者であるかを知る、それは人間にとって最も素晴らしい冒険だと思っています。

 

創作活動において大切にしていることは何ですか?

私が作品で扱う題材は、作品制作に使用する素材と同様に、最も気をつけていることのひとつです。

でもたぶん、最も重要なのは、作品を創る過程、創作の過程で変化する感情です。それは一針一針を通して得られる癒しでもあります。

 

これからの抱負をお聞かせください

私の新しい本がスペインで出版されました。この本が日本語に翻訳されることが私の夢です。より多くの私のフォロワーさんに、この過去7年にわたって私が積み重ねてきた仕事についてもっと知ってもらえると嬉しいです。

この本の中には私の日本でのテキスタイルの冒険について書かれたチャプターがあります。間違いなくこの本における私のお気に入りのチャプターです。

 

2025年の11月には、また日本を訪れてワークショップを開催する予定です。私が愛する日本で、私の作品や価値が受け入れられていることに感謝の気持ちでいっぱいです。

 2025年はロンドンやフランスのナンテスでのワークショップや、スペインマドリッドでのテキスタイルアートの美術館における大きなテキスタイル展示会に参加予定です。

アイトルさんの視点で見る日本の文化や伝統から逆に刺激を受けたり、自由なスタイルの作品を通して、手作りの魔法にもう一度触れることができたように思います。アイトルさん、今後のご活躍を楽しみにしています。

アイトルさんのお気に入りCohana

淡路瓦の針が磨ける針やすめ

こんな美しくて機能的なプロダクトを見たことなかった!お気に入りの針が命を吹き返す、なんてすばらしい。本当に使いやすくてCohanaにしかない道具だと思っています。

 

 

ご協力ありがとうございました!

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